恋愛から結婚へ
結婚へのチャンス

新しい時代の花嫁修業

こんな花嫁修業のしかた
生花
府川さんは、生花の勉強歴七年になる人です。今では、先生の手伝いもできるほどになって、毎週土曜日には、朝から夜九時ごろまで、先生といっしょにお弟子さんのめんどうをみています。府川さんが生花に志すようになった始めには、会社の花道部でけいこをしていました。もちろん、将来お花の先生になろうなどという気持があったわけではありません。ところが、しばらくやっているうちにおもしろくなり、会社の花道部では、花材にも花器にも限度があるところから、もの足りなくなりました。じゅうぶんな勉強ができないような気がして、友だちのすすめで、今の先生につくようになりました。それからますます花が好きになって、今にいたっています。
府川さんは、習いだして三年目に、花というものがわからなくて、どう生けてみても思うようにならず、たいへん苦しい思いをしたそうです。先生に伺ってみると、「生花は三年目でやっと基礎ができますが、習い始めた人の半分は、一年目にしんぼうできなくてやめてしまうのです。これでは、この次に始めるとき、また最初からやらなければなりません。三年間いやにならずにやりつづけた人は、また新たな興味がわいて、\'もっと長く勉強していくようです。生花に上達するには、できるだけたくさん見ること、生けることです。府川さんが初歩の人に教えることは、自分の目をこやすことにもなっているはずです」府川さんは、病弱で学生生活さえできなかった弟さんにも生花をすすめ、弟さんは、新しい自分の生きがいを見出したようです。今では、やはり先生の手伝いができるようになっています。府川さんが去年結婚するとき、先生からもご主人に、生花をつづけさせてくれるように話してもらいました。家庭に入っても生花をつづけたい気持の中には、花への愛着のほかに、今後おしゅうとめさんと暮らすことになるので、外へ出る機会があったほうが互いにしあわせだという考えもあったからです。このことは、ご主人も大賛成で、何の障害もなく、今も生花をつづけているわけです。おしゅうとめさんがまた、府川さんの生花に積極的に理解を示し、外へ出ることをむしろすすめてくれるほどです。そこで、このごろでは、自宅に、二、三人のお弟子さえもっています。生活の中で、特にプラスになっていると感じることを、府川さんは、次のように話してくれました。
熱中できる時間の貴重さ・・・花を生け、花のことを考えている間は、気持が集中して、周囲と全く切り離されている。忙しい家庭の主婦にとっては、こういう自分だけの時間がとても貴重です。
気持も知識も豊かになる・・・自然の姿に関心がもてるようになった。先生は\"足で生けよ\"と言われるが、花が実際に咲いているところへ行って見て、それを生けることが必要だ。花の出生、環境、器の知識等々、いろいろな勉強を通じて、花だけでなく、広い視野がひらける。先生も\"花に固まってはいけない\"と言われるのは、こういうことなのだと思う。
ご主人は、花には全く知識がなかったが、山歩きが好きなので、暇があれば、二人で花をさがしてあるきたいと、府川さんは言います。そんなことを通じて、ご主人の花に対する理解も深まってくるでしよう。このごろの府川さんの毎日は、
月曜日ー先生の自宅げいこ。この日は仕事とかねて、展覧会なども見る時間にしている。火曜日ー自宅で教える。
水曜日ー家庭の仕事。
木曜日ー夕方から、先生の出げいこの手伝い。
金曜日ー家元の教えを受ける。
土曜日ー先生の教場を手伝う。
このほか、月一回の研究会もあって、なかなかの忙しさ。家のことはおしゅうとめさんがしてくれるので安心だが、家にいる日は、できるだけ家事に精を出します。忙しいけれど、張りのある生活なので、たまに、もとの会社の同僚に会うと、「このごろ若返ったわね」と言われる由。今の府川さんの希望は、自宅とは別に、小さなおけいこ場をもちたいということです。

趣味と実用の習字
石尾淑子さんは、すでに展覧会にも入賞したことのあるベテランです。しかし、今は家庭の主婦。字を書くのが好きだったことと、仕事のためにも、自分のためにも、ちゃんとした字を書きたいと思って、習字を始めました。昨年結婚するまでは、正確なきれいな字が要求される会計事務所に勤務していました。習い始めは、小学校二、三年のころ。女学校でも課外に勉強していました。その後、六年もの療養期間があり、習字は中絶しましたが、今から五年前に再び始めたわけ。このときは、専門家にならなくてもよいから、一生あきないもの、しかも、実生活に役立つものを、自分の趣味にしたいと考えたのでした。習字の場合も、〃石の上にも三年\"のことわざどおり、根気のよい練習が必要です。どんなへたな人も、三年やれば一応ものになる。そして、それから中断することがあっても、習い忘れるということがありません。石尾さんの先生は、「短時間でよいから、毎日字を書きなさい。鉛筆でもいいから」とおっしゃるとか。だからお勤め中は、ペン字も乱暴には書かず、練習の助けにしました。家庭に入ってからは、家事をやりあげたあと、三〇分でも机に向かいます。字に気をとられて、いろいろな煩わしさをすっかり忘れてしまうので、心を落ち着けるにはもってこいです。「主婦になってみてわかったことですが、主婦は家計が苦しいといいつつも、けっこうむだつかいをしている点があるもの。月謝くらいは、その気になれば生み出せると思うのです。友だちや親戚にも、翌字をやりたいという人が何人かいますが、やりたいと思ったとき始めるとよいのです。そしてあとは気長につづけていくこと」石尾さんはこう言っています。石尾さんの習字が生活にしみ込んでいるのを感じるのは、「新聞にはさまれてくる広告を見ても、字配りや形が気になってしまう。また街を歩いていても、看板とか包装紙が目につきますね。ただ習字をしているというだけなのに、いろいろなものに興味がひかれるのは楽しいことだと思います」ということばを聞くときです。

自動車、ソロバン、英語など
このごろは自動車ブーム。運転免許証の保持者が、女性の中にもたくさんいます。来春、食料品店にとつぐ岡田ちか子さんの花嫁修業はちょっと変わっています。目下、車の運転修業中なのです。このごろの商売に自動車はつきもの。主婦も車をたやすくあやつれれぜ、ずいぶん商売の助けになります。それに、休日には、夫といっしょにドライブもできるし、こんなことから、岡田さんは、婚約がきまると、さっそく教習所通いを始めました。おそらく、花嫁道具の中に、免許証も加えてお嫁入りができるでしょう。岡田さんの話では、このごろ商店の縁談には、車の運転のできる人、とはっきり条件にする場合があるそうです。個人商店では、文字どおり共かせぎ生活になるのですから、主婦だからといって、何の技能もないのはマイナスです。同じような理由で、ソロバンを花嫁修業の一つに加えている娘さんもいます。ソロバンなんて、花嫁修業というには、いかにもじみなおけいこですが、藤岡千鶴子さんがその人です。藤岡さんはサラリーマンの家庭で育ちましたから、商売のことは何もかも初歩から勉強しなければなりません。しかし、それは結婚後のことにして、今はせめてソロバンでも、と習っている次第。このごろでは暗算も板について、自分が買物に行った先で、女店員さんなどがしどろもどろでやっていると、歯がゆくなってしまうそうです。また、あるところでの話に、あるお金持ちが、商売のために英語のできる花嫁を物色していたとか。奥さんを秘書扱いにするのは困りますが、しかし、こういう面でも夫を助けられれば決して悪くはありません。英会話などが、ただのアクセサリーにならないように少し身を入れてやっておけば、主婦の知識や関心も、国内から国際的にまで伸ばされていくでしょう。

源氏物語の読書会
東京のO会館で、毎月二回、源氏物語の講座が開かれています。集まるのは若いお嬢さんや主婦たち。先生は、大阪から上京して来られる村山サウさんです。もうかれこれ四年もつづいているこの読書会は、一度出席すると次も必ず来たくなるほどおもしろいので、人気を呼んでいます。源氏物語といえば、その名はみんな聞いていても、あの長い、むずかしい物語を、どうやって読み解いてよいかわかりません。それに、平安朝の昔なんて、私たちに何の関係があるでしょうか。「…と思うでしょう。ところが村山先生のお話は違うのですよ。源氏の君の気持や立場などを、私たちの場合におき替えて話してくださるのです。平安朝だって、やっぱり今と同じようないろいろな問題があったのだなと、とても身近な気持になってしまうのですよ」これは、講座が始まって以来一日しか休んだことのない、北浦せつ子さん(仮名)の感想です。源氏の君のことばを、先生がいくらか関西なまりのある現代調に直して聞かせてくれると、その当時、源氏がほんとうに話していたのは、こんなことばだったのではないかしら、と思ってしまうほどです。姫君たちの恋愛感情も、今の私たちの感情に訴えてくるものがあるのです。北浦さんは、講座の日が勤務先(デパート)の休日でない場合は、お休みをとってまで出席しています。「源氏物語を現代語で聞かせてくださりながら、今の時事問題などにもふれて話されるので、目を開かれる思いをすることがたびたびです。それに、この講義を聞くようになってから、芝居を見てもよくわかるのですよ」北浦さんは、これから結婚しようというお嬢さんです。結婚しても、聴講はやめないそうです。源氏物語に出てくるたくさんの女人たちの心の動きから、深い愛情のあり方をも教えられて、しあわせな家庭を築かれるようにと願います。